マネジメントレビューとは?
ISO9000でマネジメントレビューという単語が良く出てきますが、今回はこのマネジメントレビューで何をやるのか?やったら何が効果的(メリット)なのかを解説いたします。
マネジメントレビューは多くの企業で採用されている会議体になります。
この会議を行う目的は、品質に関する情報を経営層へ報告し、トップダウン型で製品やサービスの品質を良くしていくことにあります。
なぜ経営層に報告する必要があるのか?ですが、
組織の不足しているリソース(人、モノ、金)を見極め適切に配分していくためです。
例えば、原因究明に時間を要し不具合が発生する可能性のある製品が出荷され続けている状況と仮定します。その際、原因究明を行っている部門へトップダウンで人員増加させたり、時には出荷停止を判断し、対応の協議を行ったりします。
マネジメントレビューとは経営者を交えて品質について協議をする会議体 のことです。
なぜマネジメントレビューが必要なのか?
品質に関する情報を経営者を交えて共有し、適切に改善を行うためです。
問題解決
大きな品質問題が発生した際は、マネジメントレビューの議題としてピックアップされます。
問題解決に取り組む際は、1つの部門だけが頑張ってもなかなか改善を早めることができず、関係部門の協力が必要不可欠です。
様々な部門が参加するマネジメントレビューにて重要な品質問題を協議をおこないます。
マネジメントレビューには経営者の他にも、各部門の責任者や管理職が参加するのですが、この品質会議にて品質問題の情報を共有することで、各部門の状況を見極め担当者を決め、タスク・期間を明確にすることが、改善への近道につながるのです。
ロスコストを抑える上でも、関係部門同士が問題解決に向けて同じ方向を向くためにもマネジメントレビューの重要な役割を担っています。
情報共有
マネジメントレビューの議題には、品質問題以外のトピックもあります。
例えば、マーケットでの不具合発生情報・開発評価で確認できた不具合数の情報など、品質に関する情報も共有します。
私は市場で発生していた不具合率をグラフでまとめて報告する仕事も一時期していました。
マネジメントレビューで協議した内容を議事録として記録します。この記録を残しておくことで、組織の情報資産として活用します。
そうすることで、人に依存した情報の管理体制にならないように工夫しているのです。
対策促進
経営層や責任者が参加するマネジメントレビューにて、組織として重要な品質課題を協議することで、適切な場所にリソースを配分し対策を促進する効果もあります。
例えば、
不具合の原因が究明できずなかなか対策が打てないとき、原因究明部門へエンジニアを増員し原因究明を加速させます。
また、経営者レベルでしか判断できないような、解析に使う重要な装置やツールを他部門から供給したり、時には高度な技術力を持っている外部機関の協力を得たり、このようにリソース(人・モノ・金)を適切に配分することで、対策(解決)を促進します。
マネジメントレビューのやり方は?
いつマネジメントレビューを開催するのか?
定期マネジメントレビュー
一つ目のマネジメントレビューを実施するタイミングは、定期的なタイミングで行うものです。
定期的にマネジメントレビューを開催し、トピックの進捗状況を確認していきます。遅れが生じている案件がある場合は、対応部門の上からトップダウンで対応を促します。
また、品質情報を定期的にアップデートしていくことで、最新の情報を常に監視できるような狙いもあります。
組織が掲げる目標を実現するためにPDCAサイクルを回し、継続的改善をしていくためにも、マネジメントレビューは重要な役割を果たしています。
ちなみに、私の会社では1回/月 で開催されています!
経営が品質課題に向き合い、しっかり協議を行えるよう、定期的なマネジメントレビューでは経営層や責任者の都合をしっかり把握したうえで開催を行いましょう。
緊急的な会議
定期的にマネジメントレビューの他に、組織へ重要な影響を及ぼす品質問題が発生した際に、緊急で会議を行い、問題解決に向け方針協議を行うケースもあります。
マネジメントレビューには誰が参加するのか?
経営者
マネジメントレビューには経営責任を持つトップマネジメントに参加いただきます。
品質という重要項目の方針を協議する場に経営者を巻き込むことで、現状の問題を浮き彫りにさせ、危機感をもってもらうようにしましょう。
経営者を巻き込みマネジメントレビューを行うことで、今どういう状況で、何が問題となっていて、解決するのに何が不足しているのかを、しっかり把握してもらうことで、リソースをスムーズ・適切に配分してもらうためにも、経営者の参加は必要です。
経営者が品質問題に対して危機感を持つことで、トップダウン形式で対応が促進します。
『いま』だけでなく『これから』どうなりたいのか、品質への意識を持っていただくことで、顧客へ安心・安全に使っていただける製品を生み出していくことが可能です。
品質保証部門
マネジメントレビューの主催者は品質保証部門です。QMS事務局などがある企業の場合は、当該事務局が運営を行うケースが多いです。
経営層や各部門責任者のアポイント取りから、会場の設営、当日の司会進行、議事録の作成と承認回覧と配布なども行います。
品質に関係する情報をまとめた資料を作成し、それについて説明するのも品質保証部門の大事なお仕事です。
関連部門の責任者・管理職
品質問題は品質保証部門のみで解決することは困難です。
営業・設計・購買・生産技術・生産管理・出荷統制・サービス部門などなど…
様々な部門を巻き込んで開催します。
例えば、
営業であれば顧客満足度の測定結果や、設計や生産技術部門はプロジェクトの進捗状況などを報告しあいます。
マネジメントレビューには皆さんの積極的参加が必要不可欠です。
品質会議ではなにを報告するのか?
顧客満足度の調査結果
品質保証部門が担当するケースが多いですが、営業が行う企業もあります。
顧客の満足度調査結果を報告し、当社の製品やサービスが顧客に満足頂いているのか情報を共有します。
自社が自ら顧客へアンケート調査を行ったり、顧客から直接サプライヤへ通達が来たり、色々なケースがあります。
自動車部品の場合は、基本的に後者になります。
顧客の工場で発生した不具合数(納入不具合と呼びます)、エンドユーザーで発生した不具合率(市場不具合と呼びます)、開発遅れ、不具合報告書の回答期限が守れているか・・・などなど、様々な指標で評価が行われています。
前者では、独自の視点で項目を定めていることが多く、数値で表さずに文章でアンケートをもらうケースもありました。
アンケート形式では、どの顧客の声をマネジメントレビューで報告するのか主観的な意見が入ってしまうので、事前に関係者と協議の上ピックアップするのが良いでしょう。
不具合の発生実績
不具合の発生状況についての情報を共有します。
顧客工場で発生した不具合(=納入不良)とエンドユーザーで発生した不具合(=市場不良)の情報を共有します。
基本的に納入不良は、単品不具合であるケースが多いので発生率(ppm)の情報を共有します。
しかしながら、市場不良はソフトウェア起因の潜在的欠陥が顕在化したり、傾向的な不具合の情報が多いです。そのため、グラフを用いて市場実績として共有を行うケースが多いです。
私は、横軸を製品の『生産月』、縦軸を『不具合発生率』の折れ線グラフを作成していました。経過月で重複折れ線グラフとし、スパイクが可視化できるグラフをマネジメントレビュー用で一時期、作成していました。
顧客で発生している不具合の情報のみではなく、製造部門や生産技術部門と協力し、工程内で発生した不具合(工程内不良)していた不具合の情報も集計し、マネジメントレビューで報告します。
製品としての不具合情報以外にも、製品を構成する部品や材料の不具合情報も共有します。
工程内不良や部材不良に関しては、パレート図やヒストグラムを使用し不良比率や重要課題を明確にし改善対応状況の報告を行います。
パレート図やヒストグラムについては、
以下記事を参考にしてください!
内部監査・外部監査の結果報告
監査対応の結果を報告します。
内部監査であれば、内部監査計画書の報告を行い本年度はどのような計画やどう実行し、課題が何で同是正したのか(PDCAサイクル)について、報告を行います。
内部監査のみではなく、外部より受ける監査結果についても共有します。
外部監査とは、第三者機関から受ける監査を指しています。
例えばISO9001やIATF16949についての審査を受ける監査(一般的には、JQA(一般財団法人日本品質保証機構)という組織が監査します)であったり、顧客から受ける監査のことを指します。
IATF16949という言葉が聞きなれない方は、是非以下の記事を参考にしてください!
設計開発段階の情報共有
新規で設計しているニューモデルの製品がある場合は、その進捗状況についてもマネジメントレビューで共有します。
例えば、ソフトウェアのバグカーブや、APQP対応状況、顧客から受けている要求事項について共有します。
進捗に遅れが生じている場合は、トップマネジメントから開発部門の責任者へトップダウンで促進するよう指示され、リカバリー策の検討が行われます。
APQP対応については以下で解説してます。
参考に頂ければ幸いです!
品質に関係する法規や規格の変更
品質に関係する法律について変更があった場合は、マネジメントレビューで情報を共有します。
例えば、製品含有化学物質にいての国際規定(代表的なのは、RoHSやREACHなど)や、IEC規格、UL規格など、国際情勢の変化で規定が更新されるケースがあります。
こういった変更に組織としても対応できるよう、マネジメントレビューでは法規や規定の変更状況についても監視し報告を行います。
マネジメントレビューのメリットとは?
前述にもありますが、定期的に経営者を交え品質に関する情報交換と協議を行うことで、組織が直面している品質の最新情報を共有できることです。
品質はとても重要課題であるので、現場の担当者クラスのみで把握しているということは大問題。
しっかりと担当者から情報を吸い上げることで、会社としてどの方向に向かうべきか、あるべき姿に向け適切な対応を取ることができます。
このような取り組みを行うことで、組織の信頼性やブランド力の向上を見込めます。また品質異常を最小化にすることも効果として見込め、ロスコストの最小限化にも寄与することができます。
まとめ
- マネジメントレビューには『経営者』『品質保証部門』『関連部門』の積極的参加が求められます。
- 定期的に品質に関する情報を共有することで、組織として適切な判断をくだせます。
- 経営者を交えることでトップダウンでサイクルを回すことができ、対応促進の効果が見込めます。また、リソースの配分についても検討ができます。
- マネジメントレビューを行うことで、記録として情報を保管できます。
- 組織としての、信頼性/ブランド力の向上、ロスコスト最小限化に寄与できます。
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