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皆さんはIATF16949という品質規格はご存じでしょうか?自動車を作る上で非常に重要な規格になります。今回は、その規格を誰にでも分かってもらえるよう解説をしていきたいと思います!
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- 自動車関係の部品製造メーカーに勤務されている方
- 品質保証に従事する方(これから担当する方や新入社員の方)
- 自動車部品の品質ノウハウを知りたい方
品質マネジメントシステム
皆さんは品質マネジメントシステムをご存知でしょうか? IATF16949を知る上で、品質マネジメントシステムを知る事はとても重要です。まず、品質マネジメントシステムとは何かを解説します。
品質マネジメントシステムとは、
弊社の製品を使うお客様にずっと満足頂けるよう、我が社が定めた”決まり事”!
品質とは? 例えば、皆さんがお持ちのスマートフォンを想像してください。”画面が暗い” ”音声が悪い” など、その製品が持っている特性(性能や状態)について、お客様のニーズにマッチしない(要求に達しない)ことを『品質が悪い』と表現します。
品質マネジメントシステムは、品質を確保し続けるための決まり事を指します。
皆さんが使っているスマホを作っているメーカーが急にサービスを停止したり、不具合が起きても何も対応してくれなかったりしたら、その企業の信頼できますか?
では、品質マネジメントシステムはどのように構築されているのか説明します。
皆さんも『どういう決まりがあったらお客様を満足させる事ができるか』を考えながら聞いてみてください!
品質マネジメントシステムは企業のPDCAサイクル
品質を確保し続けるにはどうしたら良いでしょうか?
それは、私たちが目指す ”あるべき姿” に近づくために、計画を立て、実行に移し、反省して次回の計画に活かしていくことです。
項目 | 内容 | 具体例 |
Plan | 計画を作成する | リンゴを5個売る! |
Do | 作成した計画通りに実行する | 駅前でリンゴ売りを始める |
Check | 実行した結果を確認する | 3個しか売れなかった… |
Action | 確認した結果から修正点を見出し行動に移す | 人が集まる大きな駅で売ろう! |
Plan | 行動から再度計画を見直す | 6個売れたので、次は10個売ろう! |
実際に、企業では様々な部門が存在しますね。例えば、営業や設計、製造や品質保証等。これら部門がそれぞれの計画(目標)を持っており、それを達成するよう業務を遂行しています。例えば、営業であれば売上金額が指標にされたり、品質保証であれば不具合率を指標にするケースが多いです。上記では、”販売”を例に挙げましたが、製品や製造工程を設計する人がいたり、生産現場で実際に生産業務に従事する人がいたり、そういう人達にも指標が存在し、様々な部門の人が一つになって品質を確保するよう仕事に取り組んでいます。
基本的に品質マネジメントシステムは、その製品を製造したりサービスを提供したりするのに関係する人が適用範囲になるため、人事総務や経理といった部門は品質マネジメントシステムの適用外になるケースが存在するので注意が必要です。
このようにPDCAサイクルを回し続けることで、製品の品質を確保し続けることができます。
如何でしょうか。品質マネジメントシステムの大切さは分かって頂けましたか?
ものづくりをする上でとても大切な仕組みになりますね。
ただ、会社がいいかげんな品質マネジメントシステムを持っていたらどうだと思いますか?持っていても、その決まりが守られていなかったらどうなるでしょうか?そうです、無意味なんです!
しっかりと仕組みを守ろうとしている会社と、そうでない会社の差別化を図らなくてはいけませんね。次の章では、品質マネジメントシステムの国際規格について説明していこうと思います。
国際規格【ISO9001】とは?
ISO9001とは品質マネジメントシステムの国際規格になります。ISO9001は業種や分野に関係なく取得することができ、製造メーカーだけではなく、病院やコンサルタント企業など幅広い会社が保有している規格です。品質マネジメントシステムがしっかりと機能しているか、外部審査機関(JQA)が監査を行い判断する、一種のものさしのようなものになります。機能していると判断された企業には審査機関から認定され、認定証が授与されます。
ISO9001:2000は、全部で第8章からなる構成で、
1章~3章 適用範囲、関連規格、用語と定義 4章 品質マネジメントシステム 5章 経営者の責任 6章 資源の運用管理 7章 製品実現 8章 測定、分析及び改善
となっております。
IATF16949(自動車産業品質マネジメントシステム規格)とは?
では本題です。
IATF16949は、自動車に特化した品質マネジメントシステムの国際規格になります。あらゆる企業が取得することができるISO9001と反し、現時点では、自動車に搭載される製品を扱う会社しか取得することができません。
例えば、自動車に搭載されている通信機器の製造メーカー(Tier-1)はIATF16949を取得可能。その通信機器に搭載されている半導体メーカー(Tier-2)も取得可能。しかし、半導体を製造するために必要な設備メーカー(Tier-3)は、直接自動車に搭載されるわけではないのでIATF16949の取得はできません。
ただ今日、実際に自動車に搭載はされないが、自動車製造に間接的に関わるメーカーに対してIATF16949を取得するような要求がTier-1やTier-2から出されており、非常に注目されている国際規格のひとつとなっています。
ISO9001をベースに自動車特有の要求事項を追加し作られたのがIATF16949になるので、単独の品質マネジメントシステムとはみなされず、ISO9001とあわせて使用しなくてはないません。
自動車の要求に加え、CSR(Customer Specific Requirements:顧客固有要求事項)と呼ばれる顧客がそれぞれ独自に持った要求事項も追加されます。IATF16949ではこの顧客固有要求事項を特に重要視しています。
IATF16949の歴史
IATF16949の前身でISO/TS16949があります。これは米国のBIG3(GM,FORD,CHRYSLAER)が要求しているQS9000という規格や、ドイツのWGやBMWを会員とするVDAという規格を統合し、国際化した共通規格となります。よってIATF16949の取得を要求する完成車メーカーは主に海外企業となり、日系の完成車メーカーはIATF16949に類似した固有要求事項を持っていますが、IATF16949の取得自体を要求しているメーカーは少ないです。
いかがでしょうか?IATF16949について、少しわかってきましたか?
ではなぜ、IATF16949は必要とされるのでしょうか。そこにはIATF16949が掲げる大きな目標が存在するのです。
IATF16949が掲げる大きな目標とは?
この自動車産業品質マネジメントシステムの大きな目標は、不具合の予防(未然防止)、サプライチェーン全体でばらつき・無駄の削減、継続的改善が機能する品質マネジメントシステムを構築することになります。
自動車は一度量産に入ってしまうと、世界中に何十万台という車両が走ります。仮にその地域の法律を満たさなかったり、人命に関わる不具合が確認された場合は、不具合が起こらない対策品へ交換しなくてはなりません(リコール)。そうなると、膨大なロスコストが発生したり、人が命を落としたりしてしまい、カーメーカーの信頼性が低下してしまいます。
自動車業界で働くうえでの品質とは、リコールに関わるような不具合を未然に防止し、ばらつきない製品を生産し続け、継続的に組織や製品を改善できる体制を構築することを意識しなくてはなりません。このような考えを徹底することで、Q、C、D(品質、コスト、納期)を満たした製品を作り続け、顧客満足を得られる製品を継続的に生産・販売することができます。
これらは、Tier-1メーカーのみが行えばよいというわけではないです。Tier-1は、Tier-2にこのような取り組みを要求することで、確かなQCDを満たした製品を購入し、その購入した製品を使い部品を作って完成車メーカーへ納めます。
以降同じように、Tier-2はTier-3へ要求し…とサプライチェーン全体にいきわたらせることが重要です。IATF16949が掲げる大きな目標は『IATF16949をサプライチェーン全体に反映することで、自動車産業全体のQCDを確保すること』になります。
ISO9001とIATF16949の具体的な違いとは?
前章で説明した通り、IATF16949はリコールを意識しているので、起こった不良を改善するのではなく、不良自体を未然に防止することに重点を置いています。未然に防止するためには、設計開発段階で計画を練って、リスク分析を行い不具合の種をつぶしこみ、安定した生産工程で製品のばらつきを抑えながら生産しなくてはなりませんね。
そこで、IATF16949ではコアツールが要求されています。ここではそのコアツールを紹介します。
- PPAP (Production Part Approval Process):生産部品承認プロセス
- APQP(Advanced Product Quality Planning and Control Plan):先行製品品質計画
- FMEA(Potential Failure Mode and Effects Analysis):故障モード影響解析
- MSA(Measurement System Analysis):測定システム解析
- SPC(Statistical Process Control):統計的工程管理
それぞれを簡単に説明すると。
PPAP (Production Part Approval Process):生産部品承認プロセス
製品の評価データや生産や製品に関わる標準書類を書面にして、顧客承認をもらう手続きのことです。
APQP(Advanced Product Quality Planning and Control Plan):先行製品品質計画
製品開発段階で行う計画です。その計画ではチーム編成を明確にしたり、顧客とのやり取り(試作品の納入や監査の日程など)の計画を立て、製品完成までこの計画表で管理します。
FMEA(Potential Failure Mode and Effects Analysis):故障モード影響解析
故障(不具合)が発生するリスクを抽出し、それぞれをスコア付けすることで、リスクの優先度を数値化して減らすための解析法になります。
MSA(Measurement System Analysis):測定システム解析
測定器がしっかりと機能している必要があるので、測定器自体の安定性を解析する手法になります。測定器の公正と測定値のばらつき検証を行います。
SPC(Statistical Process Control):統計的工程管理
工程内などの測定データを統計的に解析する手法です。データを定期的に取得することで、工程で発生している異常な状態を検知し、未然に防止するために使用します。
如何でしょうか?ISO9001は製品(サービス)を提供するうえでの基本的な要求事項が規格化されていますが、IATF16949は自動車部品に特化することで、細かくタスクを明確にしています。
本日のまとめ
- 品質マネジメントシステムはお客様に安心して製品を使って頂けるための仕組み
- ISO9001はものづくり(サービス)において基本的な要求事項
- IATF16949はISO9001をベースに自動車製造に特化した要求事項
- IATF16949で要求されているコアツールを使用し、QCDを確保し続ける
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