【IATF16949徹底解説】4.4.1.2 製品安全 要求事項の解説と解釈

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目次

ISO9001・IATF16949 第4章 組織の状況

規格項目要求事項
ISO9001:20154組織の状況
ISO9001:20154.1組織及びその状況の理解
ISO9001:20154.2利害関係者のニーズ及び期待の理解
ISO9001:20154.3品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
IATF16949:20164.3.1品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 – 補足
IATF16949:20164.3.2顧客固有要求事項
ISO9001:20154.4品質マネジメントシステム及びそのプロセス
IATF16949:20164.4.1.1製品及びプロセスの適合
IATF16949:20164.4.1.2製品安全

 4.4.1.2 製品安全

当該項目の、IATF16949要求事項のポイントを自分なりにまとめてみました。

組織は、製品安全に関係する製品及び製造工程の運用管理方法を規定した文書化したプロセスをもたなければならない。

該当する場合には、必ず以下の事項を含めなければなりませんが、それに限定されません。

① 法令等の規制に関係する、製品安全に影響を及ぼすような要求事項を確認し、組織は特定しなければならない。
② ①における要求事項の顧客からの通知に従う必要がある
③ 設計FMEAは特別承認を取らなくてはならない
④ 製品安全に関係する品質特性を組織は特定しなくてはならない
⑤ 組織は、安全に関係する製品の品質特性及び製造時点の品質特性を管理しなければならない
⑥ コントロールプランと工程FMEAは特別承認を取らなくてはならない
⑦ 組織は、対応計画を定め運用しなければならない
⑧ 定められた責任を明確にして、トップマネジメントを含めた上申プロセス及び情報フローを明確に規定する。その規定には、顧客への通知プロセスを含めなければならない
⑨ 製品安全に関係する製品及び関係する製造工程に携わる要因に対しては、組織または顧客によって定められた教育訓練を行う必要がある
⑩ 製品又は工程の変更前に、組織は製品安全に関する潜在的影響の評価を含めて、変更の実施前にその評価結果を承認しなければならない
⑪ 顧客指定の供給者を含む、サプライチェーン全体にわたって製品安全に関する要求事項の連絡をしなければならない
⑫ サプライチェーン全体にわたって、(最低限)製造ロット単位での製品トレーサビリティを要求し実施しなければならない
⑬ 新製品を開発する際には、学んだ教訓を取り入れ、製品安全に努めなくてはならない

(注)
特別承認は、安全に関係する文書を承認する責任のある機能(通常は顧客)による追加の承認のことを示します

解説(概要)

製品安全の定義として『顧客に危害、危険を与えないことを確実にする、製品の設計及び製造に関する規範』と定められています。

従来、製品安全の概念は、品質の概念とと一部異なるものと捉えていました。
製品安全は、設計思想のことを示し利用していてユーザーに危害が及ばないよう安全性のある製品を作り上げることを示していますが、IATF16949:2016 では、製品安全の概念を品質マネジメントシステムの一部として取り込まれました。

取り込まれた背景として、運転支援技術の高度化に伴い、高い品質の製品が求められるようになっていいます。万が一、不具合でこのような運転支援技術が機能しなくなった場合は人命に関わる品質問題へとつながってしまうためです。

では、『安全』はどこまで考えればよいかになりますが、
ISO/IEC Guide51(安全規格を策定する際の基準となるガイドライン)では、
『安全とは受容できないリスクがないこと』『許容可能となるリスクとは、社会における現時点での評価に基づいた状況下で受け入れられるリスク』
と定義されています。

解説( “それに限定されない” の意味)

該当する場合には、必ず以下の事項を含めなければなりませんが、それに限定されません。
ここでいう『それに限定されない』とは、組織の製品やサービスによっては、①〜⑬の項目で関係ないものも入っているかもしれないことを表しています。
すなわち、全てを厳守する必要はなく、組織が当てはまる場合に従えばよいです。

解説(法令・規制について)

①法令等の規制に関係する、製品安全に影響を及ぼすような要求事項を確認し、組織は特定しなければならない。

組織は設計・開発段階において、製品自体の情報(仕様、性能など)に加えて、その製品に適用される法令や強制規格などの情報を収集し、分析する必要があります。

私が所属していた会社には存在しなかったのですが、
自動車メーカーから市場調査(法令などの)を専門で行う部門を新設する助言(要求?)を頂いた経験があります。
(完全な部門としては実現しませんでしたが…)

解説(顧客の通知)

② ①における要求事項の顧客からの通知に従う必要がある
①は、その組織が情報を収集し分析を行い特定する責任があると要求している内容になりますが、顧客から、その組織へ通知があった場合も、社内へ適切にインプットし製品の設計・製造を行わなくてはなりません。

解説(特別承認)

③ 設計FMEAは特別承認を取らなくてはならない

⑥ コントロールプランと工程FMEAは特別承認を取らなくてはならない

(注)
特別承認は、安全に関係する文書を承認する責任のある機能(通常は顧客)による追加の承認のことを示します。

特別承認とは、注記にもありますが顧客承認の事を示します。
文書を承認する責任のある機能とは、例えば、製品の設計・開発において、社内に安全にかかわる審査者が決められていてその審査者のレビューを受けなければ、その設計(図面とか)は正式に認められないという社内ルールの事を示します。
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解説(品質特性)

④ 製品安全に関係する品質特性を組織は特定しなくてはならない
ここでいう特性とは、製品がそれぞれ持つ特有の性質になります。
製品固有の性質(仕様、性能、構造等)から製品安全に関わる特性を特定し適切に管理する必要があります。
その特性の内容にもなりますが、IATF16949:2016では重要な特性と特殊特性と呼び、特別な管理を行うように要求しています。(FMEAやCQ工程図に特別な記号で表したり、CpkやSPCで管理します)
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解説(特性の管理)

⑤ 組織は、安全に関係する製品の品質特性及び製造時点の品質特性を管理しなければならない
製造工程においては、製品安全に影響を与える製造工程や作業内容を特定し、担当する作業者のみならず外部からもその旨がわかるように明記する必要があります。
顧客監査の経験ですが、法規に関わる性能検査の工程全てに識別を行うよう指摘として挙げられたことがありました。

解説(対応計画)

⑦ 組織は、対応計画を定め運用しなければならない
ここでいう対応計画というのは、統計的に工程能力不足や不安定であると判断され、製品仕様への影響があると考えられる場合に行う対応の計画を示します。
例えば、封じ込め対応や全数選別といった暫定的な対策を講じたりすることです。顧客からこの計画が要求された場合は、顧客とレビューし承認を受ける必要があります。

解説(顧客通知)

⑧ 定められた責任を明確にして、トップマネジメントを含めた上申プロセス及び情報フローを明確に規定する。その規定には、顧客への通知プロセスを含めなければならない
上申プロセスの定義は、
「組織内のある問題に対して、適切な要員がその状況に対応し、解決策を監視できるよう、その問題を指摘する又は打ち上げられる為に用いられるプロセス」
です。
例えば、想定以上の製品安全に関わる問題が生じた場合は、その組織のどのレベルで意思決定を行い、どう解決していくのか手順を検討し、顧客へ通知するまでのフローを明確にする必要があります。

解説(教育訓練)

⑨ 製品安全に関係する製品及び関係する製造工程に携わる要因に対しては、組織または顧客によって定められた教育訓練を行う必要がある
製品安全に影響を与える作業を行う作業者やライン責任者には、技術的な知識や技能に加えて、自身の作業がどのように製品の安全性に影響を及ぼすのか、理解させ意欲的に業務に従事してもらうことが大切です。
組織は、作業者が異常な状態をすぐ察知する能力(感覚)を養い、改善への熱意などを考慮するよう取り組みを行う必要があります。

解説(事前の承認)

⑩ 製品又は工程の変更前に、組織は製品安全に関する潜在的影響の評価を含めて、変更の実施前にその評価結果を承認しなければならない
製品もしくは工程を変更する際は、製品安全に関わるような潜在的なリスク評価が存在しないか、
変更の前に分析する必要があります。
一般的にはFMEAを行うケースが多いですが、顧客から指定の分析・評価方法がある場合は、それに従います。
実施する前に、分析・評価の社内レビューを行い承認をし、顧客承認を受領後に変更を行います。

解説(供給者管理とトレサビリティ)

⑪ 顧客指定の供給者を含む、サプライチェーン全体にわたって製品安全に関する要求事項の連絡をしなければならない

⑫ サプライチェーン全体にわたって、(最低限)製造ロット単位での製品トレーサビリティを要求し実施しなければならない

顧客から指定されている部品や自社が選定した部品を組織へ供給している外部供給者へも、製品安全に関する要求事項を連絡する必要があります。
また、トレサビリティに関する要求もおこなう必要があります。

解説(学んだ教訓)

⑬ 新製品を開発する際には、学んだ教訓を取り入れ、製品安全に努めなくてはならない
過去に発生させた不具合の再発を防止するためにも、過去トラブルチェックリストなどを活用し、新規製品の設計・開発へフィードバックを行う必要があります。
学んだ教訓を活かし、次モデルの開発でリスク分析を行わなくてはならないのですが、ITAF16949のリスク分析は以下の記事で説明をしています。
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外資系Tier1メーカーで品質保証をしています。ADAS部品の開発が本業です。

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