ISO9001・IATF16949 第5章 リーダーシップ
ISO9001 及び IATF16949 の第5項 は、以下の通りです。
(下表の ”要求事項” の部分をクリックすると、解説ページにいけます。 )
規格 | 項目 | 要求事項 |
ISO9001:2015 | 5 | リーダーシップ及びコミットメント |
ISO9001:2015 | 5.1.1 | 一般 |
IATF16949:2016 | 5.1.1.1 | 企業責任 |
IATF16949:2016 | 5.1.1.2 | プロセスの有効性及び効率 |
IATF16949:2016 | 5.1.1.3 | プロセスオーナー |
ISO9001:2015 | 5.1.2 | 顧客重視 |
ISO9001:2015 | 5.2 | 方針 |
ISO9001:2015 | 5.2.1 | 品質方針の策定 |
ISO9001:2015 | 5.2.2 | 品質方針の伝達 |
ISO9001:2015 | 5.3 | 組織の役割、責任及び権限 |
IATF16949:2016 | 5.3.1 | 組織の役割、責任及び権限 – 補足 |
IATF16949:2016 | 5.3.2 | 製品要求事項及び是正処置に対する責任及び権限 |
5.3.2 製品要求事項及び是正処置に対する責任及び権限
当該項目の、IATF16949要求事項は以下の通りです。
① 製品要求事項への適合に責任を負う部門に属す要員は、品質問題を是正するために、出荷を停止し、生産を停止する権限を持たせなければならない。
注記
産業によっては工程設計の仕組み上、すぐ生産を停止できない場合があるので、この際は影響のあるバッチを封じ込めるための活動を行い、顧客への流出防止に努めなくてはならない。
② 不適合品が顧客へ出荷されないように、是正処置の責任を担っている要員へ速やかに情報が報告される手順(フロー)を構築しなくてはならない。そうすることで、潜在的不適合製品を識別し封じ込める。
③ 全てのシフトに、製品要求事項への適合を確実にする責任を負う、要員を配置する。もしくは、責任を委任された要員の配置でも構わない。
用語の解説
ISO9001やIATF16949は国際規格であるため、原文は英語で構成されています。そのため、日本語に訳した際、少しわかりにくい表現で書かれているケースが多いです。まず初めに用語について解説をします。
バッチ
日本語では「一束、一群、一団」という意味をもっています。
製品の特性にもよりますが、一般的に製造業においては、製品を一定の数量まとめて製造しています。
この数量のまとまりを『生産ロット』と呼びますが、同じ条件で製造される製品の製造数量、出荷数量の“最小単位”を示します。
ロット生産を行うメリットは様々ありますが、品質観点でいうと、不具合が発生した際の対象範囲を特定したり、波及範囲を狭めたりする効果を見込めます。
具体的にいうと、太郎さんは生産ラインで働く作業者ですが、太郎さんは体調が優れず誤って不具合品を作り続けてしまいました。その日の生産ロットは『ロットA』とします。翌日は生産ロット『ロットB』の製造となりますが、その日の太郎さんの体調は完璧!良品を作り続けることができました。
こういうケースの場合、不具合の波及範囲は『生産ロットA』に絞ることができ、仮に不具合品を出荷してしまってもトレースが容易で不具合品の回収もスムーズに行えます。
はじめに
前項目『組織の役割責任及び権限-補足』では、トップマネジメントが各部署に責任と権限を与えるよう要求しておりました。トップマネジメントが製品実現に向けて部門を構成し、各部門に責任と権限を与えるという要求事項が記載されていました。
当該項目のポイントとしては、『製品要求事項』に適合しているのか?していないのであれば、是正をすることをトップマネジメントは確実にする。
というところが主軸となっています。
一般的なものづくりに対する要求事項はこれで事足りるのですが、高品質が求められる自動車産業では不足事項があり、IATF16949で補足を入れる形でこの項目が設定されました。
解説(停止の権限)
ここで要求を受けている内容は、製品要求事項への適合に責任を負っている部門の人は、仮に品質問題が生じてしまった際に、出荷を止める権限を持たせるということです。
部品メーカーで出荷を止めることで、要求事項不適合の製品を流出しないようにするためです。
製品要求事項への適合に責任を負う要員に生産停止の権限を持たせるためには、生産中断の判断基準や品質問題発生時の処置手順を明確にすることが望ましいです。
組織によって生産停止の権限を持つ人は変わってきますが、要求事項上は『責任者』と明記されているわけでなく『責任を負う要員』と記載されているため、例えば工場長だとか生産工場社長だとか、上位責任者でない要員に停止の権限を与えることも可能です。
実際に私の経験では、品質保証部門員に権限が与えられていました。
(上長への確認はしますが)不具合が発生したらすぐに、出荷停止指示をかけ選別の指示を生産工場へ行い、物流拠点や顧客工場へ自ら出向き選別をしていました。
解説(封じ込めの注記)
産業によっては工程設計の仕組み上、すぐ生産を停止できない場合があるので、この際は影響のあるバッチを封じ込めるための活動を行い、顧客への流出防止に努めなくてはならない。
解説(不適合情報の共有)
例えば、現場作業者が品質問題を検出しても、その情報が品質保証部門や品質管理部門へ伝わらなければ是正処置活動に遅れが生じてしまいます。そうならないように、OK/NGの判定基準を明確にし、万が一NGが検出された場合はNG品を隔離するといった実際の作業手順や、その情報が関係者へ回るようなフローを明確に規定することが望ましいです。
またここでいっている、『潜在的不適合製品を識別し封じ込めるため』というのは、
明確にOKかNGか判断できないような潜在的欠陥をもっている可能性のある製品を区別し出荷させないといった意味合いを持ちます。
例えば、太郎さんが『生産ロットA』の製品を作っており、途中でケーブルが半差しであることに気づいたとすると、途中まで作り続けていた『生産ロットA』の製品は、全て不具合の可能性がある(もしかすると中にケーブルが半差しの製品があるかもしれない)ことになります。
ここで例をあげた『生産ロットA』のような製品をしっかりと識別し出荷停止(封じ込め)ができるように、報告ルートをあらかじめ定め教育できていれば、速やかに是正に対する権限及び責任をもつ要員(品質保証・品質管理)へ素早く情報が報告されることになり、適切に封じ込め対応を行えるでしょう。
IATF16949ではこのような対応を期待し要求事項として織り込んでいます。
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